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投稿記事
高梁川の東側にあたるこのエリアは、豊かな水に恵まれ昔から水田が拡がり、焼杉に漆喰壁の農家住宅が点在していました。近年幹線道路が整備され、市中心部へのアクセスが便利になったことにより、急速に住宅が立ち並ぶようになりました。この敷地は南北に住宅が迫っていますが、西側の土手方向には大きく拡がりがあり、この拡がりを住宅に取り入れることを端緒に設計を進めました。黒の下屋部分には水廻りを集め、また白の2層部分には各居室を集め、中央の吹抜け空間を介して南北明快に分けています。延床約28坪程度とやや小さめの住宅ですが、中央に大きな吹抜け空間を作ったり、各部屋をあまり間仕切らずに開放的な作りとすることで、28坪とは思えない程の拡がりを感じれるようにしています。外観はこのエリアに昔から佇む焼杉に漆喰壁の住宅の外観を踏襲し、歴史の延長線上に位置するデザインとしています。
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車いすで住む、バリアフリー和風住宅
地の家は、脚の不自由なご主人の車椅子での生活を前提とした住宅です。世の中にはバリアフリー住宅が溢れています。しかし、機能ばかりを優先しすぎてデザインが置き去りになっている様な気がしています。バリアフリーという社会からの要求と和風住宅に住みたいというご主人の要望の2つを柱として設計を進めました。まずアプローチは、車椅子で出入りしやすいように緩やかなスロープとし、土間の材料はすべりにくいものにしました。また、門を2つ製作し、さらに門の奥に細長い庭を作り、道路からの距離を取る事で家に落ち着きをもたらしました。バリアフリーの玄関というと、すぐにスロープを用いがちですが、今回は、外出用車椅子と室内用車椅子に乗り換える為、あえてスロープにはせず、乗り換えや不要となった車椅子を置きやすいように、スペースを広めに設計をしています。水廻りは車椅子を使用するとかなりのスペースを要する為、寝室、脱衣場、トイレをワンルーム化して省スペース化すると同時に、冬の寒い時期でも部屋間での温度変化が少ない様になっています。居間は、オリジナルのオープンキッチンと床の高さを上げた畳スペースを設けました。畳スペースは、自分で車椅子から畳の上へ乗り移れるように、車椅子の高さに合わせて設計をしています。また、畳スペースの片隅には、パソコンコーナーを設け、自分で自由にパソコンを使用することが出来るようにしました。車椅子を壁にぶつけて傷をつける為、ナラ材のガードを取付ています。また、生活しながら必要となった部分に手摺を自由に追加出来るように、壁の下地には全て合板を貼っています。座敷は、仏間を中心に構成をしています。以前お住まいであった家の座敷部分の寸法を実測し、以前の家とまったく同じ寸法を使って新築しました。そこに以前使っていた障子や欄間をはめ込み、畳も表替えをして再利用をしています。床の間も床の形状は再デザインしましたが、一部の床板を再利用しています。建物本体を新築として、耐震性を向上させる一方で、中身は移築をすることで、以前の思い出と家の伝統を引き継ぐことを意識しました。また、積極的に材料を再利用することでローコスト化やゴミの削減にも繋がりました。
森村厚建築設計事務所 東京都 建築家